外国に、いや外国でなくてもどこか見知らぬ土地に旅をすると、人々の姿（すがた）や立ち並（なら）ぶ店の様子など、見るものすべてが珍（めずら）しく、どこか心を浮（う）き立たせるような思いに捉（とら）えられます。あるいは山登りや半島めぐりのような自然の美しさを求める旅でもいい。銀色に輝（かがや）く山々の壮大（そうだい）な連（つら）なり、沈（しず）み行く夕日の鮮烈（せんれつ）な照り返しをきらめかせる海原（うなばら）を目の前にした時、人は何とも言えぬ高揚感（こうようかん）に包（つつ）まれます。旅は未知の世界への扉（とびら）をあけてくれるのです。
子どもたちにとって、美術館はまさしく、そのような心躍（おど）る旅への誘（いざな）いを約束してくれる場所です。ひとつひとつの作品が、新しい世界を発見する喜びを伝える驚異（きょうい）の館（やかた）です。そして時には、ワークショップに参加することを通じて、自分たちで新しい世界を創（つく）り出してゆくこともできます。さまざまなプログラムによって、子どもたちの心をいっそう豊かに、楽しく育て上げる活動は、美術館の大きな役割（やくわり）なのです。